映画『おクジラさま』から考える 世界の分断とその先の未来

おクジラさま~ふたつの正義の物語~

札幌市出身で現在ニューヨーク在住の佐々木芽生さんが監督・プロデュースしたドキュメンタリー映画『おクジラさま~ふたつの正義の物語~』が、10月14日(土)よりディノスシネマズ札幌劇場で公開されます。

本作品の舞台は、約3000人が生活する小さな漁師町、和歌山県太地町。この町の住民の誰もが「くじらの町」として400年もの歴史に誇りを持ち、自然に感謝し穏やかに暮らしていました。しかし、この太地町は過去に世界的論争に巻き込まれた町でもあったのです。

太地町の漁師たちによるイルカの追い込み漁を取材し作品にした映画『ザ・コーヴ』。この作品が米アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞したことにより世界中に波紋が広まり、「イルカ殺しの町」と呼ばれるようになってしまったのです。

映画『おクジラさま~ふたつの正義の物語~』は、『ザ・コーヴ』後の太地町に光を当て、捕鯨を守りたい日本人とそれを許さない外国人という単純な図式ではなく、賛否に縛られない多種多様な意見をカメラで捉えていきます。

そんな作品を鑑賞して、わたしたち学生が感じたことをまとめてみました。

「チラシや予告篇を観ただけでは、若い人たちは惹かれない映画かもしれません。でも実際に観てみると、それまで興味がなかった人でも、太地町の漁師たちの意見や日本にも反対派がいること、海外の人の考え方などを知ることができます。いろんな視点を中立の立場で客観視できるところがとても興味深く感じました」

「この映画はいろんな立場からも観てほしい映画です。この捕鯨問題でたくさん来日して話し合いを求めている外国人もいます。そこまでしても解決されないこの問題をよく知ってほしいです」

「観る前はクジラ漁なんて全く興味がありませんでしたが、この映画を見て興味を持ち、問題の深刻さを感じました。日本の捕鯨問題の現状についてたくさんの方に知っていただきたいです」

確かにタイトルやあらすじを見ただけではあまり興味がわかないかもしれません。ですが、私たちの知らないところでとても大きな問題になっている捕鯨問題について賛成・反対だけでなくいろんな視点から見て、考えてほしいと感じた人が多かったです。

「互いに自分の正義を掲げ、国境を越えて繰り広げられるこの争いは、あなたを新たな視点へと導くはずだ。鯨を一度食したことのある人もそうでない人も、この問題についての正義とは何かを、正しさとは何かを考えさせてくれるだろう」

「『昔から鯨の肉を食する文化があるが、ただ食べている訳ではなく、鯨に対してしっかりと感謝の気持ちがある』と太地町の漁師は語った。賛成派にも反対派にも譲れない様々な意見がある、その意見は両者とも間違っていない」

「捕鯨を続けてきた漁師の方からしたら伝統を守っている訳であって悪いことはしていないんだなと感じました」

「クジラとイルカを守りたい団体と、古式捕鯨発祥の地としてクジラとともに生活してきた太地町それぞれがただ対立し合っているだけでは解決せず、そこにはお互いを思いやる心が必要であると感じた」

「どちらも正義だが、どちらも正解ではない。双方がお互いの意見に耳を傾け、理解することが必要だと考える。そのうえで残せるもの、残せないものを平等に判断しなくてはいけないと思う」

太地町の漁師の方たちにとっては400年以上も引き継がれてきた伝統を守っているだけ。欧米人や反対派の人たちにとっては「イルカ殺しの町」である太地町。様々な意見があり、それは両者とも間違っていない。観る人をいろんな視点へ誘い、考えさせてくれるところが作品の魅力といっていいかもしれません。

「捕鯨問題を通じて「コミュニケーション問題」を描いた作品でもあると感じます。私たち日本人とは文化の違う欧米人と、一つの問題で同じ結論を出すということはとても難しいことです。この作品を観て、皆さんにも、いま私たち日本人が考えるべき問題について視点を置いてみてほしいと思います」

「400年の長い歴史があるクジラ漁をいきなり「やめてくれ」なんて言われても急にやめることはできないし、海外の人たちが「残酷だ」「クジラは食用ではない、今すぐ辞めて」という気持ちもとてもわかる。私たちはなにかを犠牲にしないと生きていけない。両極の立場にある「二つの正義」はどちらも間違っていない。そして「正義は一つとは限らない」と思う

「この映画は、文化や伝統について深く考えさせられる映画です。このイルカ・クジラ漁の問題は太地町と捕鯨反対派だけの問題ではなく世界で考えていくべき問題だと思います。この映画を観ることによってあなたが最初に思っていた考えが少し変わるかもしれません」

文化や考え方の違う日本人と欧米人で、この問題を解決することはできるのでしょうか。でもこの映画は「捕鯨問題」のことだけではなく、国内の政治や国際外交の対立、もっと身近では学校での友達関係の衝突など、意見の違う人たちと「共生」していくためのヒントを提示してくれているような気がします。

映画『おクジラさま~ふたつの正義の物語~』

10月14日(土)よりディノスシネマズ札幌劇場で公開