小説を読むのが苦手な人にこそオススメ 小林泰三『アリス殺し』

小説を読むのが苦手な人にこそオススメ 小林泰三『アリス殺し』

小林泰三さんの書く小説は背景描写が少なく、ストーリーのほとんどが登場人物たちの会話で進んでいきます。その小林泰三さんの作品の中で、私が一番大好きな作品が『アリス殺し』です。

『アリス殺し』は夢の世界と現実の世界を行き来して事件を解決していく、新感覚の本格ミステリー小説です。

そんな『アリス殺し』には“元ネタ”があります。ルイス・キャロル作『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』です。

『不思議の国のアリス』は、アリスという女の子が、白ウサギを追って不思議の国に行ってしまい、公爵夫人、チェシャ猫、三月ウサギ、帽子屋、眠りネズミ、ハートの女王、代用ウミガメ、蜥蜴のビルなどなど個性豊かな住民に出会い、さまざまな出来事が起こる、といったお話です。

そして続編の『鏡の国のアリス』では、アリスは鏡の世界がどうなっているのか気になり、暖炉の上にある鏡に顔を押し付けるほど覗いていると、不思議なことに鏡の中に入ってしまいます。鏡の中には、赤の女王、白の女王といったチェスの駒を人間サイズまで大きくした者、お喋りできる鏡の国の花たちや食べ物の体をした鏡の国の虫たちなど、かなりあべこべな住人たちが出てきます。

なぜ元ネタを紹介したかというと、原作に登場するキャラクターのほとんどが『アリス殺し』に登場しているからです。

『アリス殺し』は最初 “くどい話しかた”で始まります。私はくどい話しかたが大好きだったので、スラスラ読めましたが、嫌いな方には少し辛いと思います。ですが、そのくどい部分を乗り越えてしまえば、中盤はドキドキの連発です!

不思議の国に迷い込んだアリスの夢ばかりを見ている、大学院生の栗栖川亜理。

ある日の夢で『鏡の国のアリス』に登場するハンプティー・ダンプティーの落下死に遭遇してしまいます。夢から覚めた亜理は、大学に行くとキャンパスの屋上から玉子というあだ名の博士研究員が墜落死を遂げていたことを知ります。

次に亜理が見た夢の中で、今度は『不思議の国のアリス』に登場するグリフォンが生牡蠣を喉に詰まらせて窒息死すると、現実でも牡蠣を食べた教授が急死する事件が起きます。

夢の世界の死と、現実の世界の死は繋がっているらしい。

不思議の国では、『不思議の国のアリス』に登場する三月兎とおかしな帽子屋が犯人捜しに乗り出していたが、思わぬ展開からアリスが重要容疑者にされてしまう。

もしアリスが死刑になったら、現実の世界ではどうなってしまうのか。

亜理と同じ夢を見ているとわかった同年代の井森建とともに事件を調べ始めるが…。

というのがあらすじです。

小林泰三さんの作品は当たり外れの差が大きい(わたしはそうは思いませんが!)と言っている人もいますが、この『アリス殺し』は大当たりだと思います!

最後まで読者を飽きさせない世界観!

予期しない展開!

犯人は最後まで分からない!

本当はもっとこの作品の素晴らしさについて書きたいのですが…。あまり多くを書いてしまうと、実際に『アリス殺し』を買って読んでみた時のワクワクドキドキが減少してしまうので、これ以上書くのは控えたいと思います。

『アリス殺し』が気になった方はぜひ手に取って読んでみてください。貴方も不思議な世界の虜になってしまうこと間違いなしです。

ちなみに私は『アリス殺し』を読んでから元ネタの2作を読んでみました。より一層『アリス殺し』の面白みが増して世界が広がりました。

文:痾邊 蟆蜊蛙

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